
朝井 まかてさんの著書【銀の猫】を読みました。一言で紹介すると、江戸時代を舞台に、介護ヘルパーとして働く主人公の姿を描いた作品です。
高齢者と接することが多い私には共感する部分が多く、とても面白かったです。
介護する、介護される。看取る、そして看取られる…。
それをこの一冊で体験できるような気がします。
実際最後の日が訪れる前に、人はどのように死に向かうのか知っておくのも悪くないのではないでしょうか?
介護で一番大変だと思うこと
私が介護で一番大変だと思うこと、それは本人が介護されることに対して否定することです。要するに介護拒否ですね。
拒否する理由は様々ですが、恥ずかしいと思う気持ち、プライド、自分はまだちゃんとできるという思い、認知症などなど。
自分の身体のケアだけでなく、排泄物までもを他人にすべてさらけ出すのは確かになんとも言えない思いでしょう。
こういう場合、少し時間がかかることがあります。ですが、時間はかかれど丁寧に接していればそのうち気持ちは通じるはずです!(と思っています)
作中でもその様な場面が出てきます。主人公があきらめずに接すれば介護される側も次第に心を寄せていきます。なんともほっこりしたストーリーでとても好きな場面です。
看取りについて、人が亡くなる1週間前
作中で、人が亡くなる1週間前ぐらいからの身体に起こる変化と、その人を介助する側へのアドバイスが適格すぎたので一部分そのままの表現で紹介します。
「口を開けたまま眠り続けるので、水を綿に含ませて、それで口の中を湿らせてあげて」
「蜜柑の汁で口を湿らせてあげる程度にした方がいいと思う。周囲はね、あともう一度だけ食べさせてやりたい、呑ませてやりたいって思うけど、それはもう皆、そうなんですけど、たぶん本人はもう要らないんだよ。躰の中にもう、なにも取り込もうとしない」
そう、本人は一生懸準備を整えて、死に向かおうとしているのです。ですが家族がもっと何かしてあげたいと思う気持ちもわかります。
私としては、老衰により本人が経口摂取ができなくなり、高カロリー輸液の点滴でしばらく延命している時を見ているのが一番つらいです。身体に水が溜まってひどくむくみ、常に吸痰が必要になります。おぼれている人を何もできずにずっと眺めている気分です。(もちろん点滴により、回復が見込める人には必要な処置だと思います)
点滴を外そうとしたり、獣のように大声で叫んだりする人もいます。「はずせー、やめろー」と大騒ぎになります。騒いでいるうちはいいのですが…。
この段階で家族は大きな決断を迫られることになります。やめるか続けるか。家族の問題なのでもちろん私は口出しはできませんし、とにかく見守るしかありません。
ただ、点滴を中止して病院から出て家に帰ることができた人は、表情が穏やかになることが多かったです。もちろんそう長くは生きられません。
最後にて
江戸時代の介抱人のお話【銀の猫】。個性豊かな高齢者一人ひとりと真摯に向き合い、試行錯誤しながら支えていく主人公の姿が印象的でした。きっと時代は違っても、高齢者介護に関する悩みや課題は現代と大きく変わらないだろうなと思います。
この本は介護の大変さだけでなく、人と人とのつながりや温かさも感じられる一冊です。介護に関わる方はもちろん、多くの人に読んでほしいと思える作品でした。