文学小説、歴史小説、ノンフィクション小説、コメディー小説を一言感想付きで、簡単に紹介!
文学・文芸
📙ぼくとアナン 梓 河人 (著)
ホームレスの男性がゴミ箱から猫を拾って、さらにその猫が人間の男の子をゴミ捨て場から拾う。2人と1匹の旅物語。
<キーワード>命
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この話は子猫のバケツの目線で書かれている。イエナシビトのながれが助けたバケツと捨てられていた子供アナン。
アナンは普通とはちょっと違った男の子で、何か別の世界とつながっている。猫には何となく分かる。そんな猫のバケツも徐々に年老いていく。
命の大切さを猫の目線を通して教えてくれる優しい物語。
🗨️感想
友人から進められて読んだけど、その友人に感謝したいほど感動した。本を読んで久しぶりに心に大きな余韻が残ったのは私が猫好きのせいなのか…?
✔️子供はもちろん大人も泣ける児童書。
→『ぼくとアナン』講談社 (2009/5/15)
📙クスノキの番人 東野 圭吾 (著)
不思議な霊力を持つクスノキ。その番人をすることになった主人公は、木の持つ謎を探ろうとする。
<キーワード>家族
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今まで適当な人生を送って来た主人公が、ある日突然叔母だという女性に会いクスノキの番人をさせられることになった。そのクスノキには願いが叶うという噂があった。
🗨️感想
もっとファンタジー要素のある物語かと思ったらなんかちょっと違った。主人公が成長していく様子が楽しいのかな?クスノキについても、もう少しワクワクするものなら良かった。
✔️なぜか大人気で、好きな人は多いらしい。
→『クスノキの番人』実業之日本社 (2023/4/7)
📙ネコシェフと海辺のお店 標野 凪 (著)
もふもふの猫×おいしい料理の話。
<キーワード>料理・ダジャレ
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海辺の小屋でネコが美味しい料理を作ってくれる。このお店は現実から逃げ出したいと切実に思った時にその人の前に現れる。
🗨️感想
思ったよりも料理が細かくて笑えた。みんなそれぞれに問題を抱えていてネコシェフのお店にたどり着くけど、人間の話は全く頭に残らなかった。このネコと表紙がかわいすぎて(笑)
✔️ネコは我慢なんかしない。
→『ネコシェフと海辺のお店』KADOKAWA (2024/2/22)
📙52ヘルツのクジラたち 町田 そのこ (著)
自分の人生を家族に搾取されてきた主人公の貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年の孤独で優しい物語。
<キーワード>虐待・ヤングケアラー
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52ヘルツのクジラは、世界で一番孤独だと言われているクジラ。他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一匹だけのクジラ。この声を受け止める仲間はどこにもいない。
主人公の貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会う。
🗨️感想
一気に心が持っていかれた!
実際、52ヘルツのクジラのように、誰にも届かない声を出している人がたくさんいるのだと思うと切なくなる。どうかその声が誰かに届きますように。
✔️自信を持ってお勧め出来るベストセラー小説
→『52ヘルツのクジラたち』 中央公論新社 (2023/5/25)
📙懲役病棟 垣谷 美雨 (著)
女子刑務所に派遣された女医と看護師が受刑者の問題を解決しようとする話。
<キーワード>懲役刑・受刑者
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女子刑務所に派遣された女医、太田香織と看護師の松坂マリ江。勤務に就いた当初は罪を犯すような女たちを思いきり見下してバカにしてやりたいと思っていたし、同情の余地なんてないとも思っていた。
ところが受刑者それぞれの抱える問題が分かってくると、今まで思っていた事が間違いだったと気付き、逆にその問題を解決するためにあの手この手で受刑者のプライベートに乗り込んでいく。
現代の日本が抱える社会問題を織り込んだ心温まる人情小説。
🗨️感想
ユニークな設定で、刑務所内での生活と人情味溢れる登場人物たちにどんどん引き込まれた。サラッと読めて面白かったので他シリーズの「後悔病棟」「希望病棟」も読んでみたい!
✔️一歩間違えば、誰もが犯罪者になり得る。
→『懲役病棟』 小学館 (2023/6/6)
📙大事なことほど小声でささやく 森沢 明夫 (著)
皆それぞれ悩みがある。トレーニングジムのフリーウェイトゾーンの仲間たちと、おかまのママの人情物語。
<キーワード>筋トレ
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スナックひばりを経営するマッチョで愉快なオカマ、歯科医師のセンセー、漫画家の美女、普通のサラリーマン、スケベな広告代理店の社長、ちょっと小生意気な高校生、その時の自分に必要なカクテルを作ってくれるバーテン。そして黒猫のチロ。
フリーウェイトゾーンの変わり者たちが、オカマのゴンママに素敵なお酒と言葉で癒される。
🗨️感想
面白かった。オカマのゴンママのキャラが濃い~。スナックひばりに行きたくなること間違いなし!そしてそんなママにもやっぱり悩みはある。
「言葉ってのはね、大事なことほど小声でささやくものなの。その方が相手の心の奥にまでしっかり届くんだから」
✔️サラッと読める癒しの一冊。
→『大事なことほど小声でささやく』 幻冬舎 (2015/8/5)
📙猫を処方いたします。2 石田 祥 (著)
猫を処方してくれる不思議な病院「中京こころのびょういん」の話。
<キーワード>保護猫
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必要な人にしか見つけられない不思議な病院「中京こころのびょういん」では、薬の代わりに猫が処方される。そして猫で治らないものはないらしい。
🗨️感想
4つの物語がまとめられていて、最後にこの病院と先生、看護師の秘密がなんとなく分かってくる。少し切ない余韻が残る、猫好きにはたまらない癒しの一冊。
そしてこの表紙のイラストがかわいすぎてずっと見ていられる。
✔️どうやら猫は特効薬らしい
→『猫を処方いたします。2』 PHP研究所 (2023/11/8)
📙白の闇 ジョゼ・サラマーゴ (著), 雨沢 泰 (翻訳)
突然失明する奇妙な伝染病が広がり、感染者を隔離するもののやがて全ての人の目が見えなくなる、という絶望的なストーリー。
<キーワード>伝染病・隔離・無秩序
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突然発症する謎の伝染病。一瞬のうちに完全に失明し、目の前が真っ白になるという恐ろしい病。緊急措置として失明した人と、感染が疑われる人が精神病棟に隔離された。この白い病は次々に広がり、やがて全ての人の目が見えなくなった。ただひとりの女性を除いては。
🗨️感想
さて自分ならどうしたものか…とずっと考えながら読み続けた。想像するだけでも絶望的な状況。自分の家ならまだしも、目の見えない人だけで精神病棟に隔離されるなんて…
登場人物に名前がないのと、「 」のない会話が特徴で、それなのに読みやすく感じたのがうんと不思議に思う。強烈な体験を味わうことが出来て、予想以上に楽しめた!
❤️とても面白かったので、こちらの記事で紹介しています。
→海外小説『白の闇』全人類が失明したら、その結末は…
✔️理性や感情が極限まで追いつめられると人はどうなるのか。
→『白の闇』日本放送出版協会
📙海のふた よしもと ばなな (著)
西伊豆の小さな町でかき氷屋を始めた主人公が、友達とひと夏を過ごすというシンプルなストーリー。シンプルだけど深くて柔らかい。
<キーワード>海水浴・遺産相続・田舎暮らし
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大好きなかき氷屋を始めるために、故郷である海辺の町に戻ってきたまり。そして夏の間まりの家にいることになったはじめちゃん。
二人の自然と調和した生活が素朴で美しい。そしてうらやましい。海辺の風景が目に浮かんでとっても癒されてしまった。癖のある挿絵も印象的。
✔️かき氷が食べたくなる!暑い夏におすすめの一冊。
→『海のふた』中公文庫
📙生きる 乙川 優三郎 (著)
武士とその家族の生き様を描いた短編集。どんな苦界に身を落としても、心の中の思い出を支えに人間は生きていける!
<キーワード>切腹・武士
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「生きる」
追腹(殉死)が罪となり、自ら命を絶った人間の遺族がその罪を背負う一方で、生きていればいたで死ぬことを期待される矛盾。武士であるからこそ堂々と生きるのが難しい。
「安穏河原」
妻の薬代の為に娘を女郎屋に売ってしまう。父親が売った娘を取り戻すために…。あれが武士というものだろうか。
「早梅記」
尽くしてくれた側女を己の野心の為に解雇し、筆頭家老にまで成り上がった武士。大切なものを失った武士の老後。
🗨️感想
なかなかこれだけ満足できる本には出合わない。登場人物それぞれの思いをひしひしと感じた。素晴らしい!
✔️美しさや悲しみが溢れる感動的な作品。
→『生きる』文藝春秋
📙ひとり旅日和 秋川 滝美 (著)
人見知りの主人公が初のひとり旅に挑戦する話。旅を重ねるごとに主人公にも変化が。
<キーワード>ひとり旅・ボッチ
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人付き合いが苦手で、仕事も思うようにいかず上司に叱られてばかり。そんな『ボッチ気質』で『人見知り女王』の主人公がひとり旅に挑戦。自分以外の人間の趣味嗜好を一切気にせずに楽しむことが出来るひとり旅。
「癖になりそう…」
旅を通じて人生をどんどん好転させていく、主人公の変化が見どころ!
「ひとり旅の経験は確実に私を変えてくれた」
🗨️感想
ボッチの主人公が道中頭の中で考えていることが面白い。初めて一人で入る飲食店で考えることが完全に私と一致してた(笑)。一緒に旅をした気分にさせてくれて感謝!面白かった~。
✔️まだひとり旅をしたことがない人におすすめ。
→『ひとり旅日和』角川文庫
📙やがて訪れる春のために はらだ みずき (著)
認知症がテーマの感動小説。入院中の祖母から、庭の様子を見てきてほしいと頼まれた主人公が目にしたものは荒れ果てた庭だった。
<キーワード>認知症・園芸
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祖母に頼まれ、幼少時代に暮らしていた家を訪ね目にしたのは、荒涼とした景色だった。家の中の様子もおかしい。それをどのように祖母に伝えていいのか分からない。今まで祖母はこんな状態の家でどのように生活していたのか…。そこで、幼なじみたちの力を借りながらもう一度庭を再生させようとする。「おばあちゃんに、もう一度この庭を見せたい!」
🗨️感想
自分でも不思議なくらい感動した。意外と認知症は軽度だったというオチ。
✔️間違いなく心が癒される本。
→『やがて訪れる春のために』新潮社
📙老害の人 内館 牧子 (著)
面倒くさい老人達が主人公の小説。
<キーワード>老人
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昔話に説教、趣味の講釈、病気自慢に孫自慢。何でも、どこからでも自分の話に持って行ってしまう老人達。しかもしつこい。当然家族はえらい迷惑をこうむる。
🗨️感想
老害がテーマだけに、読んでいても老害をくらってしまう。なんとも疲れる小説だった。さらに本書を読んでうちの父も老害だと気付いた。トホホ…
✔️こうなってはいけないと、客観的に自分を見つめなおせる本。
→『老害の人』 講談社 (2022/10/17)
📙さざなみ情話 乙川 優三郎 (著)
松戸の平潟河岸を舞台にした時代小説。船頭の修次と遊女ちせの情話。
<キーワード>遊女・歴史
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高瀬舟の舟頭である修次は、遊女ちせの年季明けに身請けをするためひたすら金を蓄えようとする。ちせは時々旅籠に泊まりに来る修次を待ちわびる日々をおくる。いつか彼と暮らす日が来ることを夢見ながら、行きずりの客と過ごす毎日。
「いったい幾人の男と寝れば終わるのだろうか」
🗨️感想
松戸の平潟にこのような歴史があったなんて知らなかった。女性目線で読むと本当につらい立場にいるちせに同情してしまう。旅籠の女たちは何を希望に生きていたのだろうか。舟頭と遊女の恋物語なんて沢山あったんだろうな~。きっと。
✔️平潟河岸で働く女たちと高瀬舟の歴史を感じる時代小説。
→『さざなみ情話』 新潮社 (2009/9/29)
歴史小説
📙皇妃エリザベート 藤本 ひとみ (著)
栄光あるハプスブルク家の最後を飾る皇帝フランツ・ヨーゼフ1世と結婚した妃エリーザベトの物語。
<キーワード>シェーンブルン宮殿・嫁姑問題
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皇帝フランツ・ヨーゼフ1世はバイエルン公国の公女ヘレーネとのお見合いで、一緒についてきた妹のエリーザベトの方にプロポーズする。そして母の反対を押しのけ無理やり結婚してしまう。
その後、次々と襲い掛かる家族の不幸。天真爛漫で自由奔放な女性を選んでしまったその後の帝国の運命は。
🗨️感想
嫌なことがあるとすぐに旅に出掛け、ちょっとでも太ると過度なダイエットをしてみたり、旦那に他の女の肖像画を贈ったりと、エリザベートのキャラがおもしろい。
華やかな婚礼、きらびやかな祝宴、豪華な建造物…ちょっと現実離れしたい時におすすめの一冊。
✔️シェーンブルン宮殿に行ってみたくなる!
→『皇妃エリザベート 』講談社 (2011/12/15)
📙皇后ジョゼフィーヌのおいしい人生 藤本 ひとみ (著)
西洋歴史小説。ナポレオンに愛されたジョセフィーヌの波乱万丈な物語。
<キーワード>フランス革命
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女の武器を使って強欲に生きたジョセフィーヌは、恋愛、結婚、離婚、再婚、不倫と波乱万丈な人生を堪能した。ナポレオンにも愛され、皇后にまでなるというジョセフィーヌのおいしい人生を描いた傑作。
🗨️感想
この時代の貴族たちの様子が良くわかり面白かった。とことん女として生きたジョセフィーヌの生き様がお見事!
✔️女の武器を使って皇后にまでのし上がったおいしい人生
→『皇后ジョゼフィーヌのおいしい人生 』集英社 (2008/5/26)
ノンフィクション小説
📙ある奴隷少女に起こった出来事 ハリエット・アン ジェイコブズ (著), 堀越 ゆき (翻訳)
好色な白人医師の奴隷となった黒人少女の自伝。卑劣な虐待に苦しみながらも決して自由を諦めなかった!
<キーワード>黒人奴隷制度の実態・米国の差別
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奴隷少女を支配する卑劣な男が、過度ないやらしさでせまる…。抵抗しても希望は無い。
「あとどれだけ苦しまなければならないのだろうか。」
ある日、少女は自由を求めて所有者から逃亡する。7年間潜伏した場所は暗く狭い屋根裏部屋。決して生きる希望を失わない、自由を手にするまでの壮絶な自伝。
🗨️感想
とにかく少女に対して執着しすぎる所有者が怖い!奴隷制度について、そして人としての尊厳について深く考えさせられた。
✔️刊行から約130年後のアメリカでベストセラーになったノンフィクション。
→『ある奴隷少女に起こった出来事 』出版社 : 新潮社
コメディー小説
📙ユートピア老人病棟 江川 晴 (著)
家族に認知症の疑いをかけられた79歳の主人公。ドライブと騙され病院に連れて行かれる。
<キーワード>認知症・嫁姑問題
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最近物忘れが増えてきた元眼科医の湯浅マキ。いたって元気な高齢者で頭もキレる。ある日息子夫婦にドライブだと騙されて病院に連れて行かれ、そのまま検査入院という名目で老人病棟に入ることになった。はじめは家に帰る事を切望していたが、次第に自分の居場所ややるべきことを見つけていく。
🗨️感想
認知症の人は心の中でこんなことを思っているのか…。本書はボケている側の立場で書かれているから面白い。認知症に携わる仕事をしているから尚更そう思うのかも。大金の入ったバッグを発見したり、個性的な入院患者達との出逢いなど、飽きのこないストーリー展開で一気読みしてしまった。
✔️笑える医療小説が読みたい人におすすめ。
→『ユートピア老人病棟』小学館文庫
📙窓から逃げた100歳老人 ヨナス・ヨナソン (著)
スウェーデン人作家のコメディ小説。老人ホームの窓から脱走した100歳になる主人公の逃走劇。
<キーワード>ブラックコメディ・ベストセラー
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老人ホームの窓から脱走した100歳になる主人公アラン・カールソンが、偶然ギャング団の大金を奪ってしまい、追われる身となるハチャメチャコメディ。
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→『窓から逃げた100歳老人』笑える海外小説
🗨️感想
何かとありえないけど面白かった。翻訳も良かった。
✔️笑えるか笑えないかはあなたのセンス次第。
→『窓から逃げた100歳老人』西村書店